大阪旅行の続きです。
百舌鳥耳原中陵 もずみみはらなかのみささぎ と読みます。 有名な大仙古墳、または伝・仁徳天皇陵のことです。一番でかい古墳のことですね。 この古墳とミュシャと何が関係あるかっていうと、まあ、ないっちゃないんですが、どちらも大阪府堺市に関係があるのですよ。 古墳のほうは堺市大仙町にあり、ミュシャは堺市堺区に日本最大のミュシャコレクションがあるのです。 現在は財団法人堺市文化振興財団の所有として堺市文化館に常設展示されてありますが、もともとは 「カメラのドイ」の創業者である故土居君雄氏が、まだミュシャの知名度がほとんど無かった頃から本業の商品の買い付けや商談の為に渡欧する度に蚤の市や画廊を回ってこつこつ買い集めたものらしい。 同氏が1990年に他界されると遺族は、折角のコレクションが散逸してしまうのを憂慮して「相続放棄 → 堺市に寄贈」という形を選択をした結果、1993年に堺市に寄贈されたようである。 (wikipediaから抜粋) これは世界でも有数なコレクションであって、われわれとしては土居さんに感謝しながらその恩恵に預かろうという次第ですな。 というわけでいってきました。 JR堺市駅です。 かつて栄えた堺の面影はどこへやら。のどかな町です。 この駅のすぐ横に大きなスーパーがあってそこに併設されるような形で文化館があります。 ここにはミュシャだけじゃなくて、堺出身の与謝野晶子を紹介する「与謝野晶子文芸館」もあります。 11月5日までここでは企画展として「与謝野晶子とミュシャ」という展示をやってます。 一見何のつながりもなさそうですが、晶子とミュシャはほぼ同時代を生き、二人に直接的な接点はなかったものの、アールヌーボーを体現したミュシャの絵が晶子の活躍した文芸雑誌「明星」に挿絵や表紙絵として用いられたという間接的な接点があったため、そうした点を焦点にした展示がなされてありました。 何でも晶子の詩が、アールヌーボーぽいぞ、ということで晶子の詩によくミュシャの挿絵が使われたりしてたそうです。 「アールヌーボーっぽい」ってどんなのかよく分かりませんでしたが。 日本にアールヌーボーを呼び起こしたというか導入した、藤島武二なんかもミュシャの絵を真似てというかパクッて、今風に言えばリスペクトして描いた挿絵なんかも明星には数多くありました。 どうでもいいけど、僕、よくこの藤島武二と小説家の有島武郎とが混同するんです。 あれ?藤島武郎だったっけ?ん?有島武二?? って感じで。 うん、どうでもいいな。 晶子について僕はまったく無知で、「君死にたまうことなかれ」と「みだれ髪」くらいしか思いつかないくらいなんですが、いろいろと学べてよかったです。 中でも平塚らいてうとの論争はびっくりでした。 平塚らいてうというと日本の女性解放運動のさきがけとして、ずいぶんすすんだ考えを持ってた人なんだなあというイメージを持ってましたが、そのイメージが変わってしまいました。 というのも当時文部省の出していた女性への要求「良妻賢母主義」つまり、女性は家に入って夫をささえ、できるだけ多くの子供を生み、育てろという考えに対して反対していた晶子が、「妊娠・出産を国庫に補助させよ」というらいてうの考えを、形を変えただけで根本は良妻賢母主義に過ぎないと噛み付いたことに始まる論争の顛末が、どうもらいてうのほうが遅れているような気がしたのです。 これは「母性主義論争」とよばれるそうだけどここで晶子は 「婦人は男子にも国家にも寄りかかるべきではない」 と論じて、女性の経済的自立を説いています。 らいてうは女性を「保護」しろと、まさにフェミニズム的な論調で、女性差別を社会の問題として社会に責任を問う感じが強い。 国に保護を呼びかけるのではなく、女性自身が自立するよう呼びかけた晶子の訴えのほうが現在的で、現在の女性に対する考え方と遜色ない気がしました。 そういう意味かららいてうのイメージが変わったのです。 で、この論争を知って思ったのだけど、「女性解放運動」とフェミニズムは果たしてイコールなのかな、ということ。 なんだか「女性保護運動」のがしっくりくる気がします。 といってもフェミニズムについて何の知識もないので憶測の域を出ないけど ちょっと晶子について熱が入りすぎてしまいました。 与謝野晶子文芸館のすぐ上がミュシャ館になっていて、これがまあ、結構なもので。 一昨年くらいにやってたミュシャ展にあったものはほとんどありました。 ウミロフ・ミラーていうデカイ鏡が良かったです。 これね。 四季の夏なんかも好きです。 どうでもいいんですが「デスノート」や「ヒカルの碁」の小畑健さんはミュシャの影響をモロに受けてませんか? 既出?これ。 さて、ようやく百舌鳥耳原中陵。 堺市駅から二駅ほど電車に乗って、自動改札があるのが不思議なくらいの「百舌鳥駅」へ。 正直、でかすぎて近くに行けば行くほど何も見えなくなります。 しかも天皇陵として宮内庁の管理下に置かれているものだから、入ることすらできない。 僕みたいな愚民にはこうやって遠くから拝むことしかできないわけです。 森みたくなってるのが、前方部。なにがなんだか。 空からの絵ではよく分かるけどこういう堀に囲まれてます。 百舌鳥耳原中陵は三重の堀に囲まれていて、これはほかに類を見ないそうです。 最初からこの写真のっけりゃ話が早いんですが。 この古墳のお話は↓なんかで見てください。 天皇陵ー百舌鳥耳原中陵 とはいえ、仁徳天皇のお墓ではないことは間違いないんですが。 そもそも仁徳天皇陵が古事記に「毛受之耳原」、日本書紀に「百舌鳥野陵」として登場し、さらに平安時代の延喜式には、仁徳天皇の陵は「百舌鳥耳原中陵」と記されているために百舌鳥耳原中陵イコール仁徳天皇陵となってしまったんだけれど、百舌鳥耳原中陵のすぐ南にある履中天皇陵のほうが百舌鳥耳原中陵よりも早く造営されたことが分かったため(履中天皇は仁徳天皇の次の代の天皇)もうごちゃごちゃなんです。 当時は墓碑も墓誌もないために、墓の主を決めるのはほとんど不可能。 なので、近畿周辺、というか大和を治めていた強力な豪族の墓というくらいの見解で、古代に胸弾ませながら見学することにしました。 これは百舌鳥耳原中陵の倍塚(周りに衛星のように散りばめられた比較的小さな古墳。中心の墓の権威を高めるためのもので倍塚には誰も葬られてはいない)のひとつである、竜佐山古墳。 これだって立派な前方後円墳。 上から見るとこんな感じだそうだ。 お隣の伝・履中天皇陵。 これは後円部。 日本で三番目の大きさ。 あるいているとこんな碑が。 真意は謎。 で。 このまま帰っても面白くないし、なんだか天皇陵を見た気もしない。 ここにきて、堺市役所はいい仕事をしてくれました。 なんと21階建ての高層庁舎を持っていて、21階を展望室として、開放しているという。 さっそく電車を乗り継ぎ、南海高野線「堺東駅」へ。 ふつうに庁舎なので、職員様と一緒のエレベーターに乗る仕様。 で、その一番上からみた百舌鳥耳原中陵。 もう、どんだけでかいんだお前は。 なんとなく古墳かなー、程度のながめ。 地上21階からでもこれだけしか見えない。 改めて古代人の発想の雄大さを感じてしまいます。 しかしまあ百舌鳥古墳群とはよく言ったもので見下ろせばどこもかしこも古墳古墳古墳。 古墳好き、歴史好きにはたまんねー景色ではあります。 六本木ヒルズから見る東京の夜景の美しさもいいけど、ここの古墳もまたいい。 同じ人工物なのに。 ヒルズで夜景を見るカップルがいるのは当然だろうけど、ここで古墳見るカップルはいったい何を考えているのだろうか。 僕の場合は彼女を連れてきたら、というか絶対にきてくれないけど、まず喧嘩になるし羨ましいかっていわれたら、ちょっと羨ましい。 けどなにしゃべっていいか疑問。 「百舌鳥耳原中陵」とか完全に読めてしまう女の子にも、悪いけど、引く。 やっぱ一人が気楽でいいか~。 とか思ってたらまさに仲良く古墳を見ている若いカップルが出現。 うーんでもやっぱ羨ましいな。なんか。 この展望台、5時には閉まるのかと思いきや結構遅くまでやっているらしく、夜景スポットとしても使えるとか。夜景っても古墳ばっかしだしそんな期待もできなそうだけど。 ただ、夕日はきれいでした。 その写真でおしまいにします。 堺市ホームページ 堺市文化館
by jai-guru-deva
| 2006-09-29 04:52
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