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10分じゃ分からないTHE BEATLES その3。


『RUBBER SOUL』1965年
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1. Drive My Car ポール
2. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) ジョン
3. You Won't See Me ポール
4. Nowhere Man ジョン
5. Think for Yourself ジョージ
6. Word ジョン
7. Michelle ポール
8. What Goes On ジョン(ボーカルはリンゴ) 
9. Girl ジョン
10. I'm Looking Through You ポール
11. In My Life ジョン
12. Wait レノン・マッカートニー
13. If I Needed Someone ジョージ
14. Run for Your Life ジョン

【全体を通して】★★★★★
サウンド、詞作、どれをとってもこれまでとは明確に違う、生まれ変わったような作品。
初めて、メンバー自身によるコンセプトが立てられ、制作された。アイドルからアーティストへ。ビートルズの進化をこれほどまでに見せつけられるアルバムはない。
「In My Life」のジョン、「Michelle」のポールなど、二人の個性もよりはっきりとしてきた。そしてその個性がビートルズ史上最もいい風に作用しあっていた時期といえる。
まるで隙のない、最高の作品。

【オススメ曲】
「Drive My Car」
ポールの作品。
軽快なギターのイントロが聴こえた時点で、これまでの作品とは決定的に違うな、ということが分かる。
"Beep beep'm beep beep yeah"という車のクラクションを真似たコーラスも少し実験的な手法で、『リボルバー』につながるビートルズらしさがでてきている。
歌詞を要約すれば、
曲中の男性は、女性に「私は有名なムービー・スターになるはずで、そうなったら男性を自身の運転手にしてもいい」と伝えられる。そこで彼が断ると、彼女は男に「働くよりももっと素晴らしい時間をあげられるわ」と言ってくる。彼が申し出を受け入れると、実は彼女は車を持っておらず、「運転手が見つかったし、これからがスタートよ」と言うのであった。
という話になっているんだけど、こういう物語を入れ込むのは(小説家になりたかった)ポールの特徴。詞からして、これまでのただのラヴソングから大きく進化している。

「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」
邦題「ノルウェーの森」
シタールをポピュラーソングに初めて導入したといわれる、名曲。
メロディはとても綺麗で、でもどこか寂しく、ジメッとしている。
歌詞がちょっとした話になっているけど、それも楽しい。
どうやら、ジョンが妻、シンシアに内緒で浮気したときのことらしく、「it's time for bed」の後の間奏が情事をあらわし、その後の詞はピロートークにもとれる。
そういうエロティックな感じもジメッとした雰囲気を増長させてある。

「Nowhere Man」
歌い出しが、ジョン、ジョージ、ポールによる三重唱のアカペラ。
伴奏なしでこうまで綺麗な三重唱は凄い。
歌詞もジョンらしい、内省からでた(人気の絶頂にいて逆にひとりぼっちになってしまったような心境)ともとれる。
「Making all his nowhere plans for nobady」
と連呼するのもジョンっぽい皮肉の詞だなあ、と思う。

「Word」
ジョン。
「愛」ということに対してこれまでの、特定のだれかの物語ではなく、抽象的な表現を試みている。本当は政治的な詞を書こうとしたらしいんだけど、直接的に政治的な言葉で言及せず、愛の力を借りようとしたことにジョンらしさがあって、後のジョンの思想へつながる内容になっている。
ビートルズが政治に対する批判や意見を歌に盛り込み始めた作品として、面白いけど、この前の曲、「Think for Yourself」でジョージが鋭い政治批判を恋愛の歌としてオブラートに包んで歌っていて、そっちはもっと批判的でジョージらしい。そしてそれは「リボルバー」の「Taxman」でもっと直接的な批判となって、ジョージの個性が確立することになる。

「Michelle」
ポールの代表的なバラード。
「Michelle, ma belle Sont des mots qui vont tres bien ensemble」
とフランス語を取り入れていて、響き的に美しい歌。
ポールっぽいドポップでド泣かせなバラード。
「I love you I love you I love you」
のところはジョンが提案して入れている。

「Girl」
ジョン。
このアルバムでも1、2を争うほどの名曲といえると思う。
全体的に倦怠感がただよう。そしてこの頃のジョンはこういう雰囲気の曲が多い。
「ズーッ」と間延びしたような息継ぎが印象的。
コーラスは「tit tit tit....」と聴こえるが、これは「おっぱい、おっぱい( ゚∀゚)o彡」と言っている。

「In My Life」
ジョンのバラード。
これまでの人生を回顧し、様々な思いが巡る。しかし、最後には恋人に戻って来て、「I love you more」となる。
しばしばヨーコとの出会いを歌ったものだと言われるが、まだこのときは出会っていない。
そのままその後のジョンの作風に続く非常にジョン的なバラード。

「If I Needed Someone」
ジョージ作。
ジョージ初期の傑作。
ジョージらしく12弦ギターのフレーズで始まる。
コーラスも綺麗で素敵。

「Run for Your Life」
ジョン。
エルビス・プレスリーのパクリ。
ジョンも
「やっつけ仕事。アルバム全体の雰囲気をぶち壊した最悪の曲。特に歌詞が最悪」
と語っていてこの曲を嫌悪している。
僕はこの疾走感と声が好きで、気に入っているんだけどなあ。カッコいいと思うけど。
「No reply」と同じく、ストーカー的な詞。ただし、「No reply」みたいな可愛さはなく、もっと陰湿。後のジョンが嫌うのも分かる。



『REVOLVER』1966年
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1.Taxman ジョージ
2.Eleanor Rigby ポール
3.I'm Only Sleeping ジョン
4.Love You To ジョージ
5.Here, There And Everywhere ポール
6.Yellow Submarine ジョン
7.She Said She Said ジョン
8.Good Day Sunshine ポール
9.And Your Bird Can Sing ジョン
10.For No One ポール
11.Doctor Robert レノン・マッカートニー
12.I Want To Tell You ジョージ
13.Got To Get You Into My Life ポール
14.Tomorrow Never Knows ジョン

【全体を通して】★★★★☆
タイトルはビートルズの日本公演であまりの警備員の多さ(東京オリンピックと同規模の警備体制をしいていた)に驚いたポールが、その警備員の腰の回転拳銃を見て思いついたという。
ジャケットのアートワークも秀逸で、完全にアーティストとなったビートルズをみることが出来る。また、「サージェントペッパー」につながる、サイケな雰囲気も感じる。
このころ、ビートルズはライブ活動に嫌気がさし、スタジオにこもることが多くなっていた。ライブでは、観客の声に演奏がかき消され、客はもちろん、演奏者である自分たちにも音が聴こえないほどだったという。それで演奏はヒドくなる一方。
ジョージは
「演奏がミスっても手を振ったり腰を動かしたりすれば誤魔化せた」
と言っていて、実際に当時のライブ映像にその様子は残っている。
ジョンは
「ビートルズを聴きたければレコードを買ってください。ビートルズを観たければライブにいらしてください」
と非常に皮肉たっぷりのコメントを残している。
ツアー中は常に厳戒な警備体制の下で監視され、身動きがとれずストレスが溜まっていた。
(日本ツアー中、ポールはお忍びで皇居へ、ジョンはお忍びで東京観光をしている)

またフィリピンでのコンサートの後、当時の大統領夫人イメルダ・マルコス主催のパーティを、ビートルズはすっぽかしてしまう。権力者におもねることが大嫌いなビートルズのロックでカッコイイ一面だが、これに、フィリピン国民が激怒。とてもヒドい目にあったそうだ(ようやく乗り込んだ帰りの飛行機も離陸許可が出ず、フィリピン当局は、フィリピンでのコンサートの収益金の全てを要求、ビートルズ側がそれを呑んでようやく離陸許可が出た)。このことがあって、ビートルズのメンバーは全世界でフィリピンは最も行きたくない場所になってしまった。

さらに、ジョン・レノンが親しい友人の記者にいつもの皮肉まじりのジョークで
「キリスト教はいずれ衰退して駄目になるだろう。これはあきらかなことで、僕の言うことは間違っていない。歴史が証明してくれるはずだ。若者のなかでビートルズは今やイエス・キリストよりも人気がある。キリスト教とロックとどちらが先に駄目になるか何とも言えないけどね」
等と語ったことが、歪められて大々的に報じられ、特にアメリカで、ビートルズ排斥運動につながった。

自分たちの発言の影響力にも、自分たちを取り巻く狂った環境にも嫌気がさしたビートルズは徐々にメディアへの露出を減らし、とうとうライブ活動もしなくなった。
そんな環境の中で制作されたこのアルバムは、非常に実験的な音楽になっていて、到底ライブでの再現性のないものになっている。
インドへと傾倒して行くジョージに引きずられ、インド音楽の要素を取り入れた曲、弦楽八重奏をフィーチャーした作品、果てはテープの逆回転を取り入れた曲まで、思いついたアイデア全てを盛り込んだこの作品はまがうことなき、ビートルズ史上最高傑作。
ただ、「Yellow Submarine」はいらないなあ。
これのせいで全体のまとまりが壊された気がする。
それで☆4つ。


【オススメ曲】
「Taxman」
ジョージの代表曲。ジョージらしい政治批判の曲。
この曲が発表された当時(1964年から1970年までの期間)イギリスの政権は労働党のウィルソンが握っていた。この政権下では富裕層に対し、95%という嘘のように高い税金を、充実した社会保障を維持するために課していた。
歌詞はこの高すぎる税金に対して皮肉を込めて批判している。このやり方は非常にジョン的でもある(事実、ジョンが詞を手伝っている)。
Should five percent appear too small
Be thankful I don't take it all
「5%ではご不満ですか?全額徴収されないだけでも感謝しないと」

And you're working
For no one but me
「結局あなたがたは、私のために働いているのですよ」

なんかがそう。
また、中盤の

If you drive a car
I'll tax the street
If you try to sit
I'll tax your seat
If you get too cold
I'll tax the heat
If you take a walk
I'll tax your feet

「車を運転なさるなら
道路に税金を
おすわりになるのなら
いすに税金を
お寒いようでしたら
暖房に税金を
散歩なさるのでしたら
その足に税金をかけましょう」

なんかは、ポップなメロディに乗せて痛烈な皮肉を言っている。そして、きちんと韻をとっているから、より軽快な響きに聞こえて、それがまた皮肉感たっぷりで、この曲中でも僕が大好きなところ。

「Eleanor Rigby」
ポール。
「イエスタディ」に続いてストリングスが使用されてある。ヴァイオリンが入っているのもポールのアイデア。
音楽的にも優れているが、何よりも詞。ポール特有の物語調の詞に磨きがかかっている。
エリナー・リグビーとマッケンジー神父の孤独な話は実話のようでまったくの空想の話。
出てくる教会はリバプールの教会をモデルに考えていたらしいが、びっくりなことに、その教会の裏にある墓地には「エリナー・リグビー」の墓と「マッケンジー神父」の墓が存在するという。これはポールも知らなかったらしく、びっくりしたらしい。という都市伝説のような話もある。

「I'm Only Sleeping」
ジョンの名曲。
時間に追われる自分たち、ひいては現代の社会を風刺した内容になっていて、ジョン的。このアルバムで、ポールの作詞とジョンの作詞の方向性がまったく別方面に向かっていることが分かる。ポールは具体性のある物語を作り、ジョンは抽象的で曖昧な詞を作り出す。
この曲はそんなジョンの詞を楽しむのも良いが、凝った音作りのほうにも注目したい。
基本はアコースティックギターだが、テープの逆回しによるギターフレーズを取り入れていたり、回転数を操作して、ボーカルを作っていたりしていて、非常にけだるそうな、雰囲気を出している。また、間奏部分には、あくびに見立てた音を入れていて、曲調に一層のけだるい効果を加えている。
「I am sam」という映画のサントラで、「vains」がこの曲をカバーしていて、それもめちゃくちゃかっこいい。なんせ、ビートルズ・ミーツ・ニルバーナと称されたバンドですからね。

「Love You To」
ジョージ以外のなにものでもない。
個人的にはタル過ぎて、いつも飛ばすので、まったくオススメではないんですが(笑)、インド音楽を全面に出してきている初めての曲なので、ビートルズの歴史上、はずすことは出来ませんでした。
音楽的にも思想的にもインドにずぶずぶはまっていくジョージ。
音楽はシタールとタブラというインドの楽器で構成されてある。
シタールの奏者は不明だが、タブラの演奏はインド人奏者によるもの。
歌詞も「愛」をテーマに、哲学的に書かれてある。
もしかすると、ジョージのほうが「愛」というひとつの真理にジョンより早く気づいていたのかも知れない。
実際、インドの影響をうけ、ヒッピー的な
Love & Peace
をビートルズに持ち込んだのはこの曲からも分かるとおりジョージの仕業で、ジョン、ポール、リンゴはジョージに引きずられるようにインド思想にはまっていくことになる。そして中でも深く心酔することになるのがジョンで、それがジョンのLove & Peaceの活動の原点になったといえる(もっとも、もっと大きな原点をたどれば、母親の愛に餓えていたということにまでもどるわけだが)。

「Here, There And Everywhere」
ポールの名バラード。
綺麗で、ズバリ名曲です!というのはやっぱりポールですね。完璧にすばらしい曲であるだけに、飽きがきやすい。ポールの曲ってそんな気がするんです。それで、ちょっとひねた、ジョンの方に行ってしまう。
僕もビートルズを聴き始めのころは、なんだか分かりにくくてなじみにくいジョンを敬遠して、ポールの、耳になじみやすい曲が好きでした。
でもしばらく聴くうちにジョンのほうが面白みが出てくるようになってジョンの曲を聴く回数のほうが増えました。

「She Said She Said」
ジョンの曲。
LSD体験を通して書かれてある。このころのビートルズは麻薬漬けになり始めていて、どんどんぐちゃぐちゃした曲作りになっていく。
この曲も変調やテンポの変わりが激しく、この感じは、これ以降のジョンの曲作りを代名詞的に表している。
また、以前の記事で触れた、リンゴのドラムもそろそろ気持ち悪く聴こえてくるころ。

I know what it's like to be dead

の詞がLSD体験からきているという。

「And Your Bird Can Sing」
疾走感がカッコいいジョンのナンバー。
ギターはジョージとジョンのツインギターで、とてもドライブ感がある。
ポールによるベースも複雑で曲に幅を持たせている。
非常にカッコよくて気に入ってます。

「For No One」
ピアノが中心になって、ホルンの音も入っている。ポールお得意のクラシックな感じのするナンバー。
ポールの曲の中でも好きな曲です。
ジョンも気に入っていたそう。

「Doctor Robert」
ジョンとポールの共作。リードボーカルはジョン。
ドラッグについてビートルズとしては初めて言及していて画期的。
ロバートという医師もニューヨークに実在した医師。

「I Want To Tell You」
ジョージ。
フェイド・インから始まり、フェイド・アウトで終わる。
最後の、フェイド・アウトしながらの「I've got time」のコーラスがインドっぽい。
ジョージの湿ったようなくぐもった声も印象的。

「Got To Get You Into My Life」
ポール。
ブラスバンドを初めて取り入れていて重層な曲になっている。
音的にどこか古臭さを感じる。ビートルズの中で珍しく普遍性を感じない(個人的に)曲。嫌いじゃないんだけど。
ブラスをいれていて、大げさになっているようで。この時代の、なんかネオンのようなチカチカした光が目に浮かんでくる。


「Tomorrow Never Knows」
ジョン。
アルバム最後にして、サイケデリック時代の幕開けを宣言する凄い曲。
テープをループさせたり、逆回転させたり、とても実験的。
カモメの鳴き声みたいなのもはいっているが、これはポールが自宅で作ったSE。
ドラッグソングの面も大きい。こういう曲は聴く側もキメてないと真価が分からないともいうけど、どうなんだろう。僕はやったことないので分かりません。
ただ、聴いていてふわふわした感覚にとらわれたりする。

歌詞は哲学的で、全文にわたり文語調になっていて難解。
国語(つまり英語)の古典が得意で好きだったというジョンの本領発揮か。
なかでも

That love is all
And love is everyone
It is knowing
It is knowing

愛がすべて
愛とはあらゆるひとびと
それは知ること
それは知ること

のフレーズは、「All you need is love(愛こそはすべて)」につながっていることがわかる。
確実にジョン・レノンが形成されつつあることがわかる重要な場面だ。


インド思想にインスパイアされたメンバーはこの後、60年代中期という時代を反映したサイケデリックな装いを呈しはじめる。
アイドル、ビートルズを脱ぎ捨て、アーティストとなった彼ら。
しかし次のアルバムではとうとう「ビートルズ」であることさえ辞めてしまう。

それは次の更新で。

ではまた。
by jai-guru-deva | 2008-02-08 14:08 | 今日知る音楽
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